すべての道は北鎌倉へ通ず。散歩道の穴場は大船から行け!(中編)
こんにちはユルネバT-800です。
さて前回の続き「中編」です。
JR大船駅から歩いて到着したのが常楽寺、正式には粟船山常楽襌寺(ぞくせんざんじょうらくぜんじ)といいます(と参道の石門に書いてあります)。
ここ常楽寺は私にとって近所であり、かつ旅先でもあります。というのはかってこの常楽寺の近くに住んでいたからです。一方で先ほどまで歩いてきた大船駅から大船中学校の間は毎日行き来する生活圏だったのですけど、その反対側にある常楽寺はかっての生活圏からは外れた位置にあります。
近くて遠い存在が常楽寺であります。
さて、この常楽寺のような寺社も含めてのいわゆる「歴史巡り」には三つのカテゴリーがあると思います。
1) そこにある(あった)
2) そこで起こった
3) 由縁がある
1)はお城とか五重塔とかで(もしくは城址のようにかっては存在していた。今は石垣しか残っていない等)建築物やお墓や遺跡などのことです。
2)は例えば関ケ原とかですね(天下分け目の戦があった)。
3)は例えばここ常楽寺なら「鎌倉幕府三代目の執権、北条泰時が妻の母の供養のために建立した粟船御堂がはじまり」というようなことです。
もちろん1)~3)は完全に分離したことではなく組み合わせでもあるわけです。
で、言い換えれば1)は見えるもの、2)や3)は文字情報など知識がないと分からないもの、もしくは目の前に見えているものに対しての意味付けとも言えます。
さて歴史巡りの目的は人によって楽しみ方も様々かと思います。私の場合、歴史的な情報を得ながら物語を心の中に描き、さらに想像の翼を広げていく(カッコつけすぎ)というようなこともあります。一方で建物や庭をインテリアのように見て楽しむということも大好きです。
ここ常楽寺にはそのような見て楽しめる立地と要素が揃っています。
では、まず参道から。山門へのアプローチである参道がほどよい長さでいいです。周りの環境は、これぞ鎌倉!ではなく現代の生活感あふれるフツーの住宅街の雰囲気なのですけど。
さてまず茅葺の山門。イイですねえ~。
平地にあっても「山門」と呼ぶのは寺院はもともと山に建てられ山号を付けて呼んだ名残りでもあります。常楽寺の場合「粟船山」が由来なので、まさにこの典型例ですね。
さて境内に入ります。こじんまりとした広さですけど、しっかりとした小宇宙があります。
この「宇宙」を感じさせるかどうか、そこに小さな庭であっても「世界」を感じられるかどうかが私にとっては、その寺社の魅力を強く感じられるかどうかの別れ目になります。
回りのフツーの住宅街からは想像できない宇宙や世界を感じるのが常楽寺の境内です。
この世界を生み出す要素として大事なのが松などの木々や緑、庭石、石段、石畳、そして仏殿などを形作っている木材です。この「木々&緑 × 石 × 木材」という表層的な組み合わせが私にとってはお寺の大きな魅力であります。
百聞は一見にしかず。こんな感じです ↓
さて仏堂に向かって右側に杉の木?の丸太ベンチがあります(ベンチのはず)。ここに腰かけて生垣の向こう側にあるほどよく手入れの行き届いた庭をお楽しみください。まさに目の快楽。煩悩満開です。
あと仏堂の木材ですけど、丸柱は寺院によくみられる台湾ヒノキかと思います。とても油分が多い木材で耐水性は抜群です。日本のように湿度が高く雨が比較的多い国での外構には最適な素材。寺社の鳥居にもよく使われています(今は入手できない木材かと思います)。
ゆっくりと境内をお楽しみください。
さて常楽寺の立地の魅力はズバリ鎌倉特有の裏山がしっかりあることです。裏山には多くの場合お墓があり、通常はお墓参りされる(お墓を所有されている方々)場合にしか裏山に入ることは許されていません。ここ常楽寺も同じ。仏殿の裏にある北条泰時公のお墓などを除いてそれ以上は境内からは裏山に入れません。
うん!ていうことは。
そうここから裏道なのです。いったん境内から出て山門に向かって左側の道を進みます。左側に民家、右側に常楽寺の境内を見ながらどんどん奥へ向かって進んで下さい。
やがて左へ道に沿って曲がると民家と裏山の間の細道の突き当りに、裏山へと昇れる丸太の階段が見えてきます。そこはちょっとした登山道。
さて、ここでスニーカー以上の靴を選んだことの意味があります。当日晴れていても前日雨なんて場合も避けたいと思わせる登りの山道です。
ここに至り、私は初めて常楽寺がまさに粟船山という大きな空間の中の一部であることを知ったわけです。
この道、昼間でもちろん人気はないのでジェイソンとかブギーマンとかにバッタリ会うと相当怖いと思います(会いませんね)。
とにかく、この裏山を登ってください。まさにこの裏山こそが大船の大奥ではと思わせる再発見なお散歩道なのであります。
続く。
では、次回もYou'll never walk alone!